2020年03月16日

『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい 経済の話』

1 はじめに 

どんな本か。著者は、あのギリシャの経済危機のとき財務大臣を務めた人で

経済学者のバルファキスさん。

彼が十代半ばの娘さんに「経済についてきちんと話すことが出来るように」

との思いから、できるだけ専門用語を使わず血の通った言葉で語ったもの。

それですから、経済がどのようにして生まれたかにさかのぼり(←着目)

金融の役割や資本主義の歴史と功罪について、

小説やSF映画などを例に挙げながら、平易な言葉で説いてゆき来ます。

なるほど、そうだったのかと頷くところが、きっと出てきますよ。

例によって、印象深かったところを紹介したいと思います。

 

2 産業革命の原動力は石炭ではなく“借金”だった。79頁

   封建時代の冨の蓄積はどのように行われたのか。

皆さんご承知のとおり、ざっくり言えば、権力者は、戦争することで

富を増やして行きました。バルファキスさんはこの封建時代に「利益」という概念は

存在しなかったというのですね。

じゃあ、「利益」という概念はどうして生まれたのか。

そうです。“企業”の登場です。

企業は利益追求を目的とした経済主体に他なりません。では、企業はどうしたら利益を

上げることが出来るか。まず、労働者に対する搾取ですね。

しかし、そんなことは、どの企業でもするわけです。

そうすると、企業間の生存競争では何が必須で必要か。

そうです “新しいテクノロジー” です。

しかし、こいつには金がかかる。すごくかかる。自己資金だけではとても足りない。

そうすると、“借金”を背負う覚悟と能力のある起業家だけが生き残れることになる。

実に、産業革命の原動力は石炭ではなく“借金”だったのです。

「目からうろこ」の指摘だとは思いませんか。

 

3 失業否定派は間違っている。120頁

失業を「否定」する人たちがいます。例えば「月に50ユーロでは食べていけない」

と言えば、失業否定派は「アフリカではもっと少ない収入で暮らしている人がいる」

という具合です。

つまり、選ばなければ仕事はいくらでもある、「失業はない」というわけです。

しかし、これは「労働力それ自体を欲しがる起業家はいない←杉浦」という

リアルを無視し議論です。

だってそうでしょう。起業家は、もうけが出ないと分かれば、いくら安くても労働者を

雇わないから。

仮に、これが不動産なら,安く買って値上がりを待つという手がある。しかし、労働力は

そうは行きませんものね。 成程、失業否定派は間違っている、

そう思いました。

 

4 交換価値のほかに経験価値というものがある。48頁

本書を読んで一番に刮目し記憶に残ったところです。バルファキスは次のように言います。

〈海に飛び込み、夕日を眺め、笑いあう。どれも経験として大きな価値がある。〉と。

これからの経済を考えるうえで、この「経験価値」は大きな意味をもつに違いありません。

私は、「クラウドファンディング」(ソーシャルファンディング)は、

この経験価値に対する気づきではないかと思います。

本書は終わりの方で、経験価値より交換価値を優先する市場社会、この市場社会から

“環境破壊”を守るにはどうすればよいか、という問題提起をします。

極めめて刺激的な問題提起。 一読に値する本だと思いました。

 

【ヤニス・バルファキス 関 美和 訳 20193第1刷  201944

                     ダイヤモンド社 1500円+税】

 

 

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posted by たっちゃん at 14:41| Comment(0) | 日記

2020年03月09日

『得書案内』のコーナーにようこそ。

「得書案内」とは耳慣れない言葉ですが言うならば本の紹介です。それなら
端的に「書評」と言えば良さそうなものですが、おこがましくてとてもそんな
大それた名付けは出来ない。「読書案内」にしようとも思ったのですが、果た
して本を読んだと言えるほどに理解したかと言えばそれも心もとない。
それで、“書(本)を得る案内”になればと思い「得書案内」としました。非
才な者の感想文のようなものですが、折に触れて手にしたものをご紹介したい
と思っております。どうぞ宜しくお願いいたします。
posted by たっちゃん at 10:03| Comment(0) | 日記